あんな、不幸な人に。
あの時確かにそう言ったのだ。目の前の、私の顔を持つ、髪の毛だけが忌々しい金色に輝く天使が。



「ねえ?」
「なに?」
澄んだ声で、私と同じ声で、彼女は応える。

自分と同じ顔で金髪、となるとどうしても嫌な事ばかり思い出してしまって複雑な気分になるが、付き合ってみれば以外に気が合う。
今日のようにお茶をするのも数回目だ。
しかし、前からどうしても理解できないことがあった。今日こそはそれを言おうと決めていた。

「あのね、あなたの旦那さんがここに初めて来たとき…。」
「ああ、あの時は本当にごめんなさいね。」
「いいのよ、ただ、その時。」

どろしーは、いささか眉をひそめて言った。

「あなた、セラヴィーのことを不幸な人、って言ったでしょ。」
「…?」

少し考えて、天使は言った。

「ああ、そうね、確かに。」

穏やかだった気分が苛つきに変わる。
どろしーは語調を強めた。

「あのねぇ、なんであいつが不幸なのよ!自分のしたいことをして、自分の欲しいものは何でも手に入れてるあいつが、なんで不幸なのよ!?」
いつもヘラヘラ笑って自分の好きなように生きているあの男が、不幸な人などと呼ばれるのは理不尽だ。迷惑をこうむっているのはむしろ自分や子供たちなのに、その元凶はあの男なのに、なぜその本人が、まるで可哀想な人間のように言われなければならないのか。

どろしーは言葉を待った。発言の撤回か、納得のいく説明か。それがなされると信じていた。

しかし返ってきたのは予想外の言葉だった。

「分からないの?貴女が分からないのなら、やっぱり彼は不幸な人間ね。」

質問を質問で返され、どろしーは言葉に詰まる。

「彼は、欲しいものを手に入れてはいないわ。」
「…なによ、それ…。」

禅問答のようなその言葉を、理解することはできなかった。
ただ、何か居たたまれない感情が生まれて、言葉が続かない。

天使は微笑んだ。

「かわいそうな人ね。」









*********

天使の回が好きで好きで。
『あんな不幸な人』とか『この幸せもの』とか『お嫁さんになってたかもね』とか『何!?何したの!?』とか。
そして何よりどりまーちゃんに対して分別が付くセラ。
金髪にはあはあするけど好きなのはどろしーちゃんだけだもんね。変態の癖になんという一途。



作成日失念



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