「さっき、矢に打たれた天馬騎士が落ちてきて、肝を冷やした。」

まだ、血生臭さが拭いきれない状況で、この男は何を言うのか。否、血生臭さ故、なのだろうか。
どのみち、そんな話は聞きたくない。ヴァネッサはその場から去りたくなる。
しかし、足は動かなかった。

「君じゃなくて安心したけど。」
フォルデは何時もの笑顔を貼り付けた。
しかし、彼の呼吸がほんの少しだけ震えた事に、ヴァネッサは気付いてしまった。
喉がひり付いて声が出ない。目を合わす事が出来ない。

「もし、君が落ちてきたら、俺が抱き止めてあげるよ。」
何時もの彼の、茶化すような台詞が聞こえる。
やっとの事で声を出した。
「それはどうも。」

何時も通りのやり取りの筈なのに、無性に不愉快になった。
ヴァネッサはフォルデを見遣る。
彼は笑っていた。何時も通りなのに、何時もとは違っている。

「だから、命くらいは、離すなよ。」









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うっかり不安定フォルデくん。



作成日失念(だいぶ初期)



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